Memoirs of the Faculty of Education, Shimane University. Educational science

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Memoirs of the Faculty of Education, Shimane University. Educational science 6
1972-12-20 発行

金管楽器の基礎奏法に関する研究

A study on the Fundamental Technique of the Brass Instrument
Hino, Keiichi
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 わが国におけるシンホニックバンドは,その発展のために各種コンクールを重視して今日に至り,現在一つの転機に立っていると考えられる。この壁を破り更に発展させるためには,指導者は好むと好まざるとにかかわらず,今後どのような方向を指向すべきかという共通の悩みを持たなければならない状態になっている。これまでの指導のあり方を反省し,新しい問題を発掘しながら速やかに対処しなければ,シンホニックバントの将来はマンネリ化してしまうおそれがある、コンクールを主な目標としてなされてきた従来の指導のあり方について,この辺で立ち止まって再検討してみる必要があるのではなかろうか。 以上のような観点に立って,私は学校教育の中でシンホニックバンドがその使命をどのような形で果してきたか,生徒たちの音楽しようとする素朴な欲求とどこで結びついてきたかを省み,原点に立って金管楽器指導の将来を考えた結果,今後はあくまでも楽器奏法の基礎を重視しなければならないと考えるようになった。 現代は情報の時代と云われている。金管楽器を学習する生徒たちは,レコード,テレビ、専門書等を通して,居ながらに豊富な研究資料を入手しやすくなった。このあり余る情報の渦の中にある生徒たちは,その流れの勢いに大きく影響を受ける。押し流されて埋没する者も多く,一進一退で一歩も進めぬ者も多いであろう。いずれにしても,その流れを乗り切ってしまう者は極めて小数である。要するに,この情報化の環境が,プラスに作用するとばかり云い切れないところに,現代における生徒たちの最大の悩みがある。情報の渦の中にあってその取捨選択に迷い,次に,選択した情報を利用し,消化していく方法に迷う。こんな例が極めて多いのではなかろうか。技術修練が学習内容の主体である音楽では,特にこのような事例が多いと云ってよいであろう。私は,専門の立場から以上のような客観的情勢を踏え,現代における金管楽器の学習に,何が緊要であるかを考え続けてきた。そして,これらの迷っている生徒たちに,適確な学習の方向および方法を与えるために,金管楽器の基礎秦法に関する諸問題をとりあげる必要があるという結論に達したのである。