Memoirs of the Faculty of Education, Shimane University. Educational science

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Memoirs of the Faculty of Education, Shimane University. Educational science 18
1984-12-25 発行

中学校技術・家庭科の被服領域における学習指導に関する調査研究 : 島根県の場合

Guidance of Clothing Education in Junior High School : the Case of Shimane Prefecture
Tatano, Michiko
Ooshima, Mari
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Description
 小学校,中学校および高等学校における被服教育は,豊かでよりよい衣生活を営む実践的能力を培うことを目ざしている。すなわち,児童・生徒の発達段階に応じて衣生活文化を伝達し,さらに新しい文化を創造できる能力の育成に寄与するものである。具体的には,児童・生徒の衣生活を対象にし,彼らが抱える生活課題の科学的な解決を通して,衣生活に関する基礎的な知識や技術の習得,および態度の育成を体系的に図ることにある。
 したがって,被服教育においては,衣生活の実践過程が教育活動の対象として,あるいは教育内容を内包するものとして重要な意味を持っている。衣生活の実践は,「何故に着るか」「何を着るか」「いかにあつかうか」「いかに着るか」「いかに変わるか」などの目標を遂行する生活行動からなる。
 被服教育は,この実践過程と深く関連するけれど,時代によって社会状況や衣生活の様相が変化するし,また児童・生徒の発達段階に即応する必要があるなどの諸条件により,どの領域を指導するか,あるいはどこに重点をおくかということが全く異なってくる。
 現行の技術・家庭科被服領域では,「生活に必要な技術を習得させ,それを通して家庭や社会における生活と技術との関係を理解させるとともに,工夫し創造する能力及び実践的な態度を育てる」という目標のもとに,〔被服1〕作業着の製作,〔被服2〕日常着の製作と被服整理,〔被服3〕休養着及び手芸品の製作によって内容が構成されている。
 これらの内容を衣生活の実践過程に対応させてみる,中学校段階の被服教育は,「何を着るか」に関わる被服製作に重点があると理解できる。そのため,「いかに着るか」の生活課題を解決する着装については,衣生活の実践過程の中で大きなウェイトを占めているにもかかわらず,製作を通して指導するというように,位置づけられているにすぎない。
 このように,被服製作重視の内容では,領域の男女相互乗入れの実践が極めて困難であるし,また製作を通して……というあいまいな位置づけによる着装の指導では,小・中・高の一貫性を欠き,着装については時間が不足するので扱われなかったり,物作りのつけたしに終るなど軽視されていると,指導上の問題点が指摘されている。さらに,「家庭科の指導内容に関する意識調査」によると,家庭科指導主事と小・中・高の家庭科教師は,被服の8内容区分の中で,着装の指導は男女に対して,被服製作と比較してより必要性が高いと認知している。
 したがって,これまで明らかにされている諸点を重ね合わせて考えると,中学校段階の被服教育は,新しい視点からその内容を検討していく必要があると思われる。
 今後の被服教育のあり方としては,着装の指導を重視するのが望ましいと,考えられているにもかかわらず,実際には十分な指導がなされていない。そこで,今回は中学校の家庭科教師にアンケート調査を実施し,被服領域全体の指導上の問題点を調べ,特にその中でも着装の指導に重点をおき,被服領域におけるその望ましい指導のあり方について検討した。