動種目の特性を生理学的側面から究明する上で,体力との関係をみることは意義あることである。競技成績を生み出す体力要素を考え,その関連性を知ることにより,各種目において必要とされる体力要素が明らかになれば個人の種目適性を判定したり,トレーニングを行ったりする際の有力な指標となりうる。
ところで,体力は一般的に防衛体力と行動体力に分類される。猪飼によると,防衛体力はストレスやストレインに耐えていく生存能力に相当し,行動体力は作業能力に相当している。本研究では運動と密接にかかわっている行動体カをとりあげ,ランニングタイムとの関係を調べた。尚,行動体力に形態面を含める考え方もあるが,ここでは機能面,すなわち行動をおこし,持続し,調整する能力を主としてとりあげた。
従来より体力とランニングタイムの関係についての研究は多数なされてきている。しかしそれらは,走距離を短距離とか長距離とかに限定するか,もしくは体力要素をあらかじめ関係深いとみなされるものにしぼるかしてなされたものである。ここでは走距離として短・中・長距離をそれぞれとりあげ,行動体力としては機能面を多面的にとらえるために脚筋力・瞬発力・脚筋持久力・全身持久力・敏捷性をとりあげた。そして,これらの項目について測定し,短距離走・中距離走・長距離走それぞれにおいて中枢となる体力要素を明らかにすることを目的とした。