本研究は,近現代の歴史学習に地域の人物を教材化して取り入れることにより,以下の2点を立証しようとするものである。①この時代に対する子どもの学習意欲を高める。②人物の生き方を通して歴史的背景や社会の仕組みを考察し合う授業を実現する。まず最初に,松江市内の中学3年生対象に実施した意識調査から,子どもが興味をもった歴史上の人物や時代,歴史や歴史学習に対する子どもの意識の特徴を明らかにした。次に,人物学習に関する先行研究で指摘されている問題点の改善や,資料の工夫をして島根県に縁のある「若榔礼次郎」と「福田平治」の二人の人物を教材化し,それぞれの授業を実施した。その際に,理解の対象の複線化と話し合い場面の設定をすることで,見方・考え方を深めようとした。その結果,開発した授業の有効性を確認するとともに,実施した2つの授業を比較することにより「身近」の条件を導き出し,さらなる授業の改善方略を提案した。