島根農科大学研究報告

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島根農科大学研究報告 8
1960-03-31 発行

湖水位の低下にもとづく沿岸農耕地の農業水利上の影響圏について

On Study of the Influence Circle of Agriculture (Irrigation) on Lake Coast due to the Falling of Lake Water Level
Suezawa, Yosiyasu
Kitamura, Kogiro
Toyokuni, Eiji
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Description
湖水の開発と発展のために,これが単一あるいは多くの目的(発電,洪水調節,工業用水,かんがい用水など)に供せられる場合,一般に湖の利用水深は増大し,時期的に大巾の湖面低下がおこってくる。このような湖水低下は,湖岸に農耕地がひらけているときは,それらの農業水利にどのような影響を与えるであろうか。
 まず,かんがい初期に湖面低下が回復していない場合,湖水を用水源とする湖面直接利用農耕地はもちろんのこと,湖沿岸の地下水を水源とする地下水利用地域においても取水に支障がおきてくる。また,湖面低下に伴って地下水位の低下する地帯においては,一般に浸透量の増加が考えられるから,水田用水量が大きくなって従来のかんがい水量では不足する田区が生じてくることがある。
 このような現象は湖水の多目的開発において,特に電力と競合して冬季発電により湖水位が低下し,かんがい初期にいまだ湖面低下が回復しない場合や,洪水調節のためにかんがい期中に湖面低下をはかる場合などにおこるものである。
 非かんがい期に湖面低下がある場合は,これとは逆に湖沿岸の農耕地の排水はよくなり裏作物には好影響を与えるが,湖水を放流する河道沿岸の農耕地は流量増大のために排水不良をきたすであろう。
 湖水をかん養している水源は降雨,湖にそそぐ諸河川及び湖周囲より流入する地下水などである。この地下水には自由地下水面をもって流れる不圧地下水と,不透水層の間にはさまれて圧力を受ける被圧地下水とがある。
本文では,この地下水について,湖水位低下に伴い沿岸地下水がどのように低下するか,そしてこの地下水低下に関連して取水施設におこる支障ならびに用水量増加の問題を,不圧地下水についてのみ取扱うことにする。そして,不圧地下水低下により農業水利上,特に取水施設と用水量増加に影響を与える範囲を推定しようとするものである。