蔬菜類の苗に電流の刺激を与える事による苗のその後の生長,果実や球根の発育促進,増収等の諸効果が論ぜられているが,その所説は必ずしも一致したものでない。葱頭に於てもその効果の著しきを力説するものと,その否定説がある。然しこの種の実験は多く通電時間については考えられているが,供試植物體の有する電気低抗の測定を缺いている。
従ってその電気的刺戟強さが明らかでなく,刺戟強さを異にする場含,相反する緒果を得る事も叉当然であろう。一體この種の反応は処理の強さや時間に対して極めて敏感である。筆者はこの意昧に於て先づ葱頭苗の電気低抗,電流,通電時間を測定し,これに対する反応を調査して栽培上の有効刺戟範囲を見出し度いと考えて本実験を計画したわけである。
叉葱頭は苗の大いさが一定範囲内にあっては発育のよい大苗程,鱗茎の肥大よろしく増収となるが,その発育が限度を超えると冬の低温に遭遇した時,苗が花芽分化を起し完全球とならないで,所謂早期抽苔株が増加して却って収量を減ずる。今かりに電流の刺戟が花芽分化当時の苗の発育に影響を及ぽすものとすれば,早期抽苔の面にも,その二次的な影響が起る筈で,単に鱗茎の発育のみならず葱頭の早期抽苔の問題に関しても,栽培上多くの興味が抱かれる。