低所得者層が必要な医療を受けられないことが、大きな社会問題として持ち上がってきている。本研究の目的は、生活困窮者自立支援制度の自立支援機関における相談票のデータを用いて、『受診抑制』のリスクが最も大きいと考えられる、生活困窮世帯の医療サービスの『受診抑制』の特徴を明らかにすることにある。分析からは、『受診抑制』のある生活困窮世帯は、「病気や健康、障害のこと」で困っていても受診できていない可能性が高く、「ひきこもり・不登校」の困りごとを抱えている世帯が多い傾向も見られた。『受診抑制』のある生活困窮世帯は、所得ベースの経済的な問題がその背景にみられるが、さらにその背景には、ひきこもり等の社会的孤立の問題があると考えられ、子どもの不登校の困りごとも抱えるなど、複合的な問題を抱えていることが改めて確認されたといえよう。