生涯に渡って自立した衣生活者であり続けるには,被服を最も効果的に着用することを計画的に遂行し,評価できる衣生活管理能力を高校生段階までに身につけることが重要である。本研究は,家庭科においてこのような衣生活管理能力を形成するための課題を明らかにすることを目的として,高校生を対象に調査研究を行った。
その結果,性差はあるものの男女とも衣生活の関心と学習意欲は高く,衣生活管理能力形成のための学習を進めるにおいては,困難な状況ではないと言える。衣生活観と衣生活行動に関する項目の中で,着方や被服の購入については,男女とも自分なりの考えを持ち,行動しようとする傾向があった。このようなことを反映してか,休日用の被服を着用する際には,男子は生活活動への適合をより重視し,女子は生活活動への適合と自己表現を同じように考慮しており,男女間で用途に応じて着用する被服の考慮点は若干異なることが明らかとなった。家庭での被服製作については,布を使用した小物類を製作する程度にとどまり,しかも少数であった。ボタンつけやまつり縫いの被服を補修するために習得した技術には男女差があるが、出来ても自分ではなく家族など自分以外にしてもらうという依存の傾向が強かった。その中で,男子ではボタンつけが出来る者は出来ない者に比べて,自分でつける者が多く,出来ることが生活の中で活用することにつながることを明確に示すものであった。
衣生活についての家庭教育は,男女とも約40%の者がなされていないという状況で,家庭科での学習が重要になるものと考えられる。そして,男女間において考え方や被服行動に差異がみられたので,その違いを踏まえ,また衣生活の関心の高さを活かして,意欲的に取り組める内容を工夫して指導することが,衣生活管理能力の形成について課題であると考える。