現在,初等から高等教育にわたる教育現場では,インターネットに代表される情報通信技術を利用した情報処理(情報基礎)教育の在り方が盛んに議論されている。また実際に,すでに多くの機関で様々な試みもなされている。このような現状を鑑み,我々はインターネット用ブラウザ上にバーチャルリアリティとしての仮想3次元空間を構築する技術に着目し,情報教育および科学技術教育のための教材開発を試みている1)。このバーチャルリアリティは,Virtual Reality Modeling Language(VRML)2)と呼ばれる計算機言語で記述して設計・作成することができる。このVRMLとHyper Text Markup Language(HTML)を組み合わせることにより,World Wide Web(WWW)上のホームページにバーチャルリアリティを表現することが,簡単な方法で可能になる。そのため,このバーチャルリアリティ技術は情報教育を含むさまざまな分野において注目を集めてゆくものと思われる。その具体的方法は,VRMLの仕様に従って物体を記述したテキスト形式のファイルを,VRML用のブラウザまたはVRMLプラグインを組み込んたWWWブラウザで読み込むだけであり,これでブラウザに物体の形状が仮想3次元空間内に表示される。その後は,マウス操作だけで仮想空間内の任意の位置から任意の方向を見ることが可能になる。さらにVRML(特にバージョン2.0の仕様)によるバーチャルリアリティにおける興味深い特徴の一つは,VRMLで記述された物体を仮想3次元空間の中で運動させられるということである2)。その物体の運動は,インターネットに関連した計算機言語であるJavaもしくはJavaScript等で記述されたプログラムで制御される。
本研究では,VRMLやJavaというインターネット関連の計算機言語と,インターネットブラウザを利用したバーチャルリアリティ技術を用いた教材を2種類作成する。1つは,学部・研究室等紹介から科学技術教育用シミュレーション学習までを一貫して行う教材で、2つめは,バーチャルリアリティを3次元可視化の方法として用いた科学技術教育用シミュレーション教材である。以下にそれらの作成例を示し,その作成方法を説明しながら,バーチャルリアリティを用いたことによる特徴等について議論を行う。