島根大学教育学部附属中学校研究紀要

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島根大学教育学部附属中学校研究紀要 35
1993-04-30 発行

自ら学ぶ生徒を育てる学習資料の工夫 : 有効な学習カードについて

上代 裕一
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内容記述(抄録等)
現代は「生涯体育・スポーツの時代」といわれている。その背景には生涯学習社会を標榜する教育全体の変化や1960年代の世界的な「sport for all(みんなのスポーツ)連動の影響などがあげられる。特に近年、急速に変化してきている様々な社会環境や価値観の多様化に対応して、人間と運動の新しい関係が注目されている。スポーツは、生涯にわたって楽しく充実した生活を営むための重要な内容として考えられるようになってきたのである。つまり「sport for all(みんなのスポーツ)」から「生涯体育・スポーツ」への変化は、量の拡大から質の向上への変化としてとらえられる。
 このような中、生涯体育・スポーツを目指し、生徒一人一人を伸ばす体育の学習指導は、「運動の特性、学習の個別化・個性化、自発的・自主的な学習」を新しいキー・コンセプトとして、これらが、具体的な授業での「運動−生徒−教師」という相互の関係の中でどう生かされるかが大きな課題といえる。つまり、生徒一人一人が運動の楽しさや喜びを味わうとともに、それを求める学習の仕方を教師が身につけさせようとするところが重要であり、そこでは、学習の主体を生徒に置き、生徒一人一人が自分に合った運動の行い方によって、自発的・自主的に学習活動を進めていくのである。
 自発的・自主的な学習活動を進めるには、今の活動の中で何が問題なのか、どのような課題を設定して活動ずればよいのか、さらに、課題解決に向けての場や練習の仕方をどのように工夫すればよいかなどの様々な場面を解決していくための具体的な手がかりが必要になる。この手がかりになるものが「学習資料」であるといえる。「学習資料」には、①スライド・VTRなどの視聴覚機器、②運動の連続性や技術のポイントを解説するための写真やイラスト、③学習の課題や練習・ゲームの仕方に関する情報を提供する各種のプリント資料、④学習の記録や達成の状況を記入していく学習カードがあげられる。
 今回の研究では、「生涯体育・スポーツ」をめざした体育学習指導のために、学習資料をどう活用すべきか、とりわけ上記の③、④にあたるもの(まとめて「学習カード」と呼ぶことにする)をいかに工夫していったらよいかという点に着目し、実践研究をしてみることにした。