島根大学教育学部附属中学校研究紀要

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島根大学教育学部附属中学校研究紀要 35
1993-04-30 発行

言語感覚を豊かにするための工夫について

佐藤 安治
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内容記述(抄録等)
 平成5年度に完全実施される「中学校学習指導要領」の国語科において、目標は次のように記されている。「国語を正確に理解し適切に表現する能力を高めるとともに、思考力や想像力を養い言語感覚を豊かにし、国語に対する認識を深め国語を尊重する態度を育てる。」この長い一文のどの部分を取ってみても、国語科において欠〈ことのできない大切な目標であることは言うまでもない。その中で、「言語感覚を豊かにする」という言葉は、昭和44年版の学習指導要領において、国語科全体の目標として登場する。この目標は、その後2回行われた改訂の中でも生き続け、さらに、その重要性を高めながら今日に至っている。平成元年の中学校指導書国語編には、生徒の言語感覚を豊かにすることの重要性が、次のように述べられている。
 「言語に対する知的な認識を深めるだけでなく、このような言語に対する感覚を豊かなものにしていくことは、生徒個々の言語生活や言語活動を一層充実させ、かつ個性的なものにしていくため極めて重要である。豊かな言語感覚は、どのような事柄を指導すればすぐさま養えるというものではなく、国語科の適正な指導を積み重ねることによって身に付くことが期待される。また、一国の言語生活の豊かさは、国民一人一人のもつ言語感覚の程度によって評価されることも少なくない。このような意味で、言語感覚を豊かにすることが目標に掲げられているのである。(下線は筆者)生徒一人一人の言語生活のレベルを引き上げることはもちろん、国民全体の言語生活のレベルを引き上げるためにも、言語感覚を豊かにしていくことが重要であるというのである。
 言語感覚を豊かにするための指導には、様々な形態がもちろんあるのだろうが、「言語感覚を豊かにする」という目標は、概して、言語事項に関する指導の目標として考えられている傾向が強いのではなかろうか。確かに、語彙を豊かにずる指導や文法の指導などは、その目標にそったものであるといえよう。しかし、文章を理解する上でも、鋭い言語感覚があればより深い読みも可能であろうし、表現活動においても、適切な言葉の選択などの面で、やはり鋭い言語感覚ば必要となってくる。つまり、「言語感覚を豊かにする」という目標は、言語事項に関するだけでなく、理解・表現の分野まで広く覆っている目標であると考えるべきであろう。
 これだけ大切な目標として考えられている「言語感覚を豊かにする」であるが、いざ授業に反映させようとする段になると、困ってしまうことが多い。まず、「言語感覚」という抽象的な語句が理解しづらいし、どのような授業をすれば、生徒の言語感覚が豊かになるのかがはっきりと見えてこないからである。そういった問題の分析を文献あるいは授業実践などから行い、言語感覚を豊かにずる指導への配慮や工夫について考えていきたいと思う。