近年、新聞やテレビを通して「自己破産」「カード破産」ということをよく耳にするようになった。クレジットカードの発行枚数が1億6千万枚を超え、年間取扱高は推計で十数兆円にも達するという。その一方で、多重債務に苦しみ自己破産して行く者が年々倍増し、80年代前半の「サラ金地獄」を超えようとしているのである。それも、20代の若者の割合がけっこう高いものになっているというのが現状なのである。消費者相談をみても、かつての商品の「安全衛生」「品質機能」についてのクレームが、今日では「販売方法」「契約・解約」「消費者信用」へとその中心が移って来ている。しかも、消費者の不注意からこうした間題に引き込まれてしまったケースがけっこう多いという。その原因として、契約に対する認識の欠如や取引の多様化、複雑化に伴い、相互の権利・義務関係が分かりにくくなってきていることなどがあげられる。したがって、このような時代の変化に対応した消費者教育が要請されているのである。
これからの消費者教育では、企業の社会的責任の明確化や消費者保護行政の充実とともに、消費者自身の自立を促す指導が大切であると考える。しかし、現在の指導の多くは、教師中心の知識注入型の学習に陥っているように思われる。これでは、主体的に行動する自立した消費者を育てることはできないのではなかろうか。そこで本稿では、「『自立した消費者』になるために(適切な課題を設けて行う学習)」の実践(平成4年12月~平成5年1月、3年生4クラス)を通して、主体的に行動する消費者を育てる指導の工夫を考えてみようとするものである。