電気の利用は暮らしの質の向上や維持、地域の内発的な発展に貢献してきた。本稿では、山陰地域、主に鳥取県に存在した戦前の電気事業に着目し、その概要と特性を整理した。そこには地域や住民の主体的な関与と、一定の決定権や選択肢が存在しており、自然との共生の視点をもちながら、地域経済の発展を志向した実践が行われていた。分散型エネルギーシステムへの転換が求められる今日において、地域の持続可能な資源利用は、地域経済や防災の面からも重要であり、地域が主体的に関与するエネルギーの自治が求められる。かつて実践されていた地域密着型の電気利用に見られる特性や課題を考察することで、山陰地域での分散型エネルギーシステムへの転換の促進に資する要素を見出したい。