島根県の県庁所在地である松江市の人口は15万人に満たないものの,県内の市町村の中では最も多い。一般に県庁所在地には人々が方々から集ってくることから人口増加が期待できる。しかし,松江市の人口増加量は決して大きなものではない。島根県市部の人口は,松江市と出雲市以外で減少してきている。また,郡部の人口に関しては,いくつかの地域を除いて減少傾向にあり,過疎地となってきている。つまり,島根県は全体的に人口が減少してきているということである。
さて,島根県の人口が減少してきているということを述べたが,その内訳はどうなっているのだろうか。ここでいう内訳とは,どの年に,どの程度,どの地域で,どの地域からどの地域へと人が移動しているかというものである。こういったことを知ることは,島根県の人口問題を考える上でまず必要な作業である。そこで,上記のような「どの」を明らかにしつつ,島根県の人口問題の基礎的な部分について分析することを本稿の目的としたい。
用いるデータは,昭和50年から昭和63年発刊の『島根県の移動人口』,平成元年から平成10年発刊の『島根県の人口移動』,平成11年から平成13年発刊の『島根県の人口移動と推計人口』,昭和50年から平成13年発刊の『島根県統計書』である。分析方法はいたってシンプルで,昭和48年から平成11年のデータを折れ線グラフで表し,そこから何らかの関係を見ることが主となっている。3節に関しては少しデータの加工をしている。
本稿は2つのパートから構成されている。1つは,島根県全域と県内各地域の人口推移,人口増減について考察するパートである。もう1つは,県内の各地域間ならびに各地域と県外との人口流出入について考察するパートである。本稿でいう島根県内の各地域というのは,島根県をまず出雲地方,石見地方,隠岐地方とに分け,さらにこれらを市部と郡部とに分けて,出雲市部,出雲郡部,石見市部,石見郡部,隠岐の5地域としたものである。隠岐は市部がないので1つの地域とみなしている。