Memoirs of the Faculty of Education. Literature and Social science

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Memoirs of the Faculty of Education. Literature and Social science 28
1994-12-25 発行

養護施設児に対する心理学的援助

The Psychological Supports for Children in the Institution
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何らかの理由で親に養育されず、養護施設に入所している子どもは、厚生省の社会福祉施設調査によれば、1993年は、全国で530施設で、26,511人いる。養護施設は、少子化の影響もあって、全国的に定員割れが目立ち、10年前の1980年の30,787人に比べて減少傾向にあるが、父母の「行方不明」「離婚」「入院」などの親の実質的不在という理由の他に、父母の「虐待・酷使」「放任・怠惰」などの理由で入所する児童はむしろ多く、養護問題が減少しているとはいえない現況がある。
 現在養護施設に入所している子どもたちの中には、不登校、非行体験、情緒的な問題など発達上の問題が多様かつ複雑に生じてきている者も多く、入所児の年齢も高くなってきているのが特徴である(「子ども白書'94」)。全国養護施設協議会資料によれば、15才以上の入所児童は、1978年は入所児童総数に対して10.6%であったのが、1992年には22.2%を占めるようになっている。
 家族から切り離されて養護施設での生活を余儀なくされている子どもたちは、親や家族の経済面、健康面、行動面などの深刻でさまざまな問題を抱えており、また最近顕著な傾向として、親や家庭は存在していても、親子関係が希薄であったり、親の養育機能が欠如していることから生じる養護ケースは増加していると言われている。このことは、現代社会にひそんでいる精神面の貧困さから起こる多くの問題を象徴的に現わしていると言える。 われわれは養護施設児に対して心理的援助の必要性を痛感された養護施設の長からの依頼を受けて、1990年から数人の子どもたちに個別に関わってきた。そこで直面した養護施設の状況や問題に関して、入所児童の事例を通して考察した(大西、伊藤1992)。
 本研究では、施設入所児に個別に心理学的援助を行う中で、子どもたちが抱えている共通の問題を明らかにし被援助者(施設入所児)と援助者との関係性、さらに心理学的援助の意義(効用と限界)について検討する。