Memoirs of the Faculty of Education. Literature and Social science

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Memoirs of the Faculty of Education. Literature and Social science 25
1991-12-25 発行

ニ台のピアノによる実践教育について(II)

A Practical Education with Two Pianos(II)
Yoshina, Shigemi
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 Piano Duo の魅力について一言で述べる事は,難しいと考えられる。しかし,次の梅津時比古氏の言葉からもわかるように,Duo の二人の心の感覚の共有を他人に伝達することであると思える。
 “音がふと連れてくるものは,何なのであろう。たったひとつの音や和音から,ある感覚や感情が胸に広がることがある。とても繊細なものであり,気づかぬうちに包まれ,言葉を与えようとすると,葉を駆ける雨のしずくのように,消えてしまう。詩人のクロードも,周りをめぐるだけで,それを名付けられなかった。
     それはメロディーのように
     ひっそりと私の感覚に流れ
     春の花がひらくように
     香りがほのかにただようように
     だが言葉が来てそれをとらえ
     目の前に見せると
     灰色の霧のように色あせ
     吐息のように消えてしまう。”
 このようにはかなく,かそけき感情の伝達は,何を創造するのであろうか。Piano Duo を二人でする行為は,上記で表現されている音覚とでも呼ぶべきものを,合奏で作り上げる事である。
 この小論では以上のことにふれながら,Bela Bartok のPiano Duo の曲を中心として,Duo の楽しさと魅力,そして筆者が学生と何故 Duo の演奏会を行うかについて論及する。つまり前論文においては精神的内面性の充実から論じた。今回は技術的面の充実を,先達のテクニックから学ばせる為にこの観点から論じる。
NCID
AN00107952