1975年に国連によって「世界婦人宣言」が採択され,それ以後の10年間を婦人の10年として男女平等を押進める年と位置づけられた。それ以後世界的規模での男女の平等を実現する運動,法制定が発展途上国を合めて前進的に展開されていった。
日本においても1977年に「国内行動計画」が策定され,「政策決定参加への促進」「新しい教育機会の創出」「新しい時代に即応する学校教育」「雇用における男女平等」「育児環境の整備」「母性と健康を守る対策」「農山漁村婦人の福祉の向上」「家業,家庭における妻の働きの評価」「寡婦の自立の促進」「老後の生活安定」「国際協力」が政府によって推進された。これらの到達,努力目標は12項目間に軽重はあるものの日本の女性のかかえている問題,つまり女性という性をテコに 1)社会経済的に総体として低位におかれ,2)その中にあって男性に対しても一層低位におかれているということから生じる発達保障上の,生活上の諸問題を解決する課題として今日的に重要な事項ばかりである。いいかえれば,国
際的なこれらの課題解決による女性の地位の水準からみた時,日本は経済発展等の水準に反してきわめて遅れた状態にあるのが現状である。
しかしこの10年間において,決して十分とはいえないが民法,国籍法の一部が改正され,本年4月から男女雇用機会均等法が施行された。この男女雇用機会均等法は男女雇用平等法として策定されるべきところであったが資本の抵抗と圧力の前に大きく後退した内容で成立した。雇用労働の分野での女性の劣悪な条件は明治初期の資本の本源的蓄積期以降120年に渡って大きく改善してきたとはいいがたいにもかかわらず,男女雇用機会均等法という賃金,労働条件,雇用の場における教育機会等の実質を伴わないともいえるところの,例えばそれは労働基準法の改悪とセットとして,あくまで男子との機械的平等ともいえる観点から男女雇用機会均等法として成立したのである。この法律が果して女性の雇用の分野における地位の向上に結実し,女性のおかれている家事労働の性役割分担,家計補助的就労と低賃金等の改善に有効に機能するかどうかは今後の検討課題であるが,本小論では女子の雇用機会の現状から男女雇用機会均等法の諸問題を検討したい。この検討は1975年の国際婦人年の「世界行動計画」で示された行動指針にある所の,女子労働者の雇用・昇進・教育の機会と待遇について,現状と男女雇用機会均等法の努力目標について実効性の面から行いたい。次いで女子賃労働と労基法改定について検討したい。