近年,生涯学習関連施設のネットワーク化の必要性が認識され,各施設間でその具現化が志向されている。昭和63年度に石川県立社会教育センタの実施した調査研究によると,全国の都道府県・政令指定都市立生涯学習・社会教育センター等(以下「センター」と記す)の中でネットワーク化の必要性を感じているセンターが95.7%存在していることが明らかになっている。ネットワーク化の意義や必要性の認識が関係者の間で高まる一方で,実践においては期待されるほどの成果をみるには至っておらず,必ずしも具体的段階に入っているとはいい難い。
ネットワクの性質上,機能の充実,業務の効率化・合理化,それに伴うコストの削減,サービスの向上等の成果が期待される。しかし,本格的にネットワーク化を進展させようとすると,準備の段階でコストの上昇や職員の負担増が生じ,本来の機能を発揮することなく途絶えてしまうケースも少なくない。また,施設の有する目的や学習資源の差異がネットワークの互恵性にアンバランスを生じさせ,施設によっては不公平感が募り,ますますその実現を困難にする。
そのような中で,近年の生涯学習に関連するネットワーク研究には,グラフ理論等を用いたネットワークの理論的基礎研究の領域,特定の先進的地域をモデルにした事例研究の領域,地域の生涯学習関連施設の一般的な連携のあり方に関するネットワーク論の領域等がみられる。しかし,ネットワクの範囲や対象が曖昧なまま論じられ,具現化に向けての方策を導き出すには至っていない。