Memoirs of the Faculty of Education, Shimane University. Educational science

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Memoirs of the Faculty of Education, Shimane University. Educational science 12
1978-12-25 発行

高校における離散確率分布の指導について

On Teaching Method of the Discrete Distribution in the Upper Secondary School
Ito, Toshihiko
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「現代における数学の発展と社会で果たす数学の役割を考慮して,新しい観点から内容を質的に改善し,基本的な概念が十分理解され,数学的な見方や考え方がいっそう育成されるようにする事」という改善の基本方針により,現行の高校の学習指導要領が昭和45年に誕生した。これにより従来「確率」は「数学IIA」,「数学III」,「応用数学」などで取り扱われていたものが「数学I」で取り扱われるようになった。「数学I」では確率の意味と基本法則,条件つき確率,事象の独立などの確率の基本的な性質や概念を扱っておる。これを受けて「数学III」では確率分布と統計的推測を指導する事になっておる。現行の小学校,中学校,高校の学習指導要領の特徴の1つは,スパイラル方式によって教材を配列しておる事である。たとえば,「確率」を例にとってみると小学校6年,中学校2年,高校1年と1年おきにその指導がくりかえされておる。小学校,中学校,高校にわたるスパイラル方式が適当であるかどうかが今回の改訂の基本方針の1つとしてとりあげられ,昭和52年に小学校,中学校の学習指導要領が改訂され,「確率」については大きく整理され,小学校6年の「確からしさ」は中学校に移り,基礎的な概念を理解させるという事に主眼をおき,「順列・組合せの考え」との関連をなくし形式的な確率の計算に深入りする事のないよう中学校3年で指導するようになった。
 このようなスパイラル方式の反省を受けて、高校の学習指導要領案が文部省から,昭和53年発表された。それによると現行の「数学I」の内容であった「確率」は高学年の選択科目「確率・統計」で扱われる事になり,その内容については,資料の整理,場合の数,確率多確率分布,統計的な推測であり,現行の「数学I」と「数学III」の確率・統計の内容を合わせたものであり,現行のものとほとんど大差ない。
 選択科目としての「確率・統計」とよばれる科目が誕生した以上,現行通りの内容と大差ないというのではなく,社会において役に立っておる確率・統計の内容をもっととり入れてよいのではないだろうか。離散確率分布についてみてみると二項分布しか扱っていない。実験・実習を大巾にとり入れ,平易に内容を展開すれば,二項分布以外の離散確率分布の指導も可能であると思う。そこで本報告は,高校の選択科目「確率・統計」の離散確率分布の指導に,二項分布のみではなく,幾何分布,ポアソン分布をとり入れる事を提案し,その指導展開例を示す。教育実践は筆者が高専に勤めていたときおこなったものである。