本研究では,音声言語表現の拡大に必要な能力と,それらの発達を促す指導方法について検討することを目的とした。行動観察や教師からの聞き取り等に加え,文法的知識やコミュニケーションについての評価を「言語・コミュニケーション発達スケール(LCスケール)等の客観的な指標を用いた実態把握を行い,音声言語表現の拡大を阻害している要因を検討した。対象児のアセスメントに基づいて音声言語表現の拡大を目指した指導を行った結果,学習以外の場面でも学習した内容を生かした表現をして伝えたり,より正確な文章にして伝える行動が増加したりした。指導終了後のLCスケールでは「語連鎖の理解」「状況画の理解」等の課題で得点が増えた。他者とのコミュニケーションをベースに文法的知識をあわせることで音声言語表現の拡大を促せることが示唆された。