果樹作が農業構造改善事業の根幹となる主産地形成の主幹作目として各地でとりあげられ,選択的拡大の成長部門として脚光をあびてきている.
しかるに一般に果樹作は収益性が高いといわれているが,零細経営においては,労賃ならびに購入諸資材の高騰により,必ずしも収益性は高くなく,経営改善が必須となってきている.
しかして現状においては,依然果樹栽培農家は零細経営が支配的大勢であり,全国果樹販売農家の67.7%が30a未満の小規模経営になっている.従って今後の新興産地との産地問競争が一層激化するにつれて,経営規模の拡大を通じて,収益性の向上が望まれる.
今まで果樹作経営の零細性を問題としてとらえられた研究は少なく,しかもなし作経営の収益性の研究はほとんどなされていない.
筆者は山陰地方における果樹として,代表的な二十世紀なし作経営をとりあげ,島根県安来市島田地区において調査を行なった.この地域は二十世紀なしの栽培が明治45年頃からなされていたといわれており,産地としては古い.しかしなし作経営農家の9%以上が30a未満の零細規模のなし園を栽培しているが,大規模経営で経営を合理的に行ない,高い収益性をあげている農家も数戸あり,経営の良否にはかなり差がある.
以上のような問題を解明するために,調査農家も30a未満の小規模階層農家3戸,調査地区では大規模階層と思われる30a以上の農家3戸,うち特に1戸は88aと極めて大規模農家を抽出して,一応将来のモデルと考え,問題点の摘出に参考とした.
この調査は昭和36年産二十世紀なしについて,島根農大式聴取調査簿によって調査,集計を行なったものである.
このような観点に立つ研究は収益性の大小両階層間での差異が重要な問題となる.