Bulletin of the Faculty of Life and Environmental Science Shimane University

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Bulletin of the Faculty of Life and Environmental Science Shimane University 1
1996-12-20 発行

有機栽培が果菜類(トマト・ピーマン)の栄養価におよぼす影響

The effect of organic agriculture on the nutritive value of tomato and green pepper
Kanetsuki, Kayoko
Imaki, Tadashi
File
Description
The effect of two types of organic agriculture(traditonal organic agriculture and Sutotyu organic agriculture)on nutritive value in tomato and green pepper was researched. Sutotyu is made of vinegar extracted from charcoal, glucose and alcohol. In Sutotyu organic agriculture, Sutotyu, charcoal and crashed crab shell were inputted. The value of vitamin C of tomato was positively correlated with the cumulative length of sunshine for a month before harvest. The values of vitamin C of tomato in traditional organic agriculture maintained high especially in fine weather, whearas those in the treatment using chemicals are not high in fine weather. There are little difference in vitamin C of green pepper, calcium or iron content of both species between treatments. Yield of tomato of organic agriculture is less than other treatments. Yield improvement of organic agriculture is needed under keeping its nutritive value.

近年,ガンなどの成人病の予防や職場環境などの変化によるストレスの増大などの視点からビタミンやミネラルを積極的にとろうとする動きがある.食生活では,栄養のバランス,とくに食物繊維などの摂取から野菜から多くのビタミンやミネラルを摂取できるのが望ましい.潜在的なビタミンC不足の割合は,平均年齢25.4歳の若年群で18.5%にのぼるという調査もある(橋詰,1994). 日本人のカルシウムの不足は恒常的であり,野菜から20%程度を摂取するので無視できない.鉄分も野菜から約20%供給され,しかもビタミンCの摂取が多いほど効率的に吸収される.
野菜からできるだけビタミンやミネラルをとるのが望ましいにもかかわらず,そのビタミン含量の低下が指摘されている この原因はいくつか挙げられる. ホウレンソウでは冬と夏ではそのビタミンC含量が3倍も異なる(吉田,1994).夏期の露地と冬期のビニールハウス栽培の比較では,トマトでは露地栽培の方が,ピーマンではビニールハウス栽培の方が高かった(吉田,1994).
 有機栽培によって栄養価が向上する可能性を指摘する人もいる.事実,有機質肥料を多用したトマトの栄養価が向上した例(吉田,1989),有機栽培でインゲンマメのビタミンCが向上した例(小林ら,1996)がある.
 ホウレンソウなどの葉菜類は施肥条件とビタミンCの関係についてよく調べられている.しかし,果菜類はトマトを除くとほとんど調べられていない.今回の実験では果菜類のトマトとピーマンに注目した.ビタミンC,カルシウム,鉄分について有機栽培で栄養価が向上するかを検討した.
 木酢酸やかにがらなどは,このごろ,有機農業の持つ潜在的な能力を十分に高めるといわれ,実用的にも利用されている(白川ら,1995).このような有機質資材は土壌の養分バランスや微生物相を改善し,植物を健全に生育させることにより,多収で高品質の野菜をつくる.このことが野菜の栄養価向上につながると予想できるが,今日まで検討されていない.有機農法に使用される資材のうちから,今回の実験では松江市にあるパイテク中国の販売しているストチュー,サンネッカE,かにがらに着目した.ストチューは木酢液,ブドウ糖,焼酎,天然ミネラルの混合液で,土壌微生物の活性化と作物の生育促進,ミネラルの補給,病虫害の忌避に効果的である.生殖生長の促進効果があり,果菜の生育の改善に効果的であると考えられる.サンネッカEは土壌の微生物相の改善やミネラルの補給,土壌養分の保持に役立つ.かにがら粉末は連作地での土壌病害の抑制と味の向上に卓効があるとされる.この3つを組み合わせた有機栽培がトマトとピーマンの栄養価に及ぼす効果についても検討した.
NCID
AA1112906X