山陰地方,とくに島根県の中新統は,頭足類化石の産出で有名である。1974年8月,浜田市畳ケ浦の,昔からよく知られた化石産地において,当教室の寺脇正治が卒業論文の調査中にAturiaを発見した。同じ頃,筆者は八束郡玉湯町布志名の露頭から頭足類の化石一個を発見した。これは一見したところ“Nautilus" izumoensis Yokoyamaに酷似しているが,詳細に調べるとオウム貝類(オウム貝目)ではなく,タコブネ類(八脚目)に属することがわかった。本稿では,この二種の産出を報告するとともに,この機会に従来の資料を要約しておきたい。
本論に入る前に,文献についてこ教示を頂いた赤木三郎(鳥取大学)・多井義郎(広島大学),化石採集のご援助を頂いた衣笠弘直(鳥取県智頭農高)・寺脇正治の各氏に謝意を表する次第である。