島根大学理学部紀要

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島根大学理学部紀要 13
1979-12-20 発行

オキサンショウウオ胚における孵化腺細胞の電子顕微鏡的観察

Electron Microscopic Observations on the Hatching Gland Cells of Hynobius naevius okiensis SATO
大氏 正己
松野 あきら
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内容記述(抄録等)
 島根県隠岐郡に属する隠岐群島の中で,最大の島,島後地区には,有尾目両生類のうち,この島の特産種,カスミサンショウウオ属のオキサンショウウオ(Hynobius naevius okiensisSATO)の生息がみられる。このオキサンショウウオは,その形態や生態における類似性から,ブチサンショウウオ群の1つとして認められている・オキサンショウウオはこれまで,産卵に関して不明の点が多く,胚を確実に採集する機会に恵まれなかったが,著者らの調査の結果,西郷町の東郷川の産卵場所では,3月下旬に産卵のみられることの多いことを知りた。
 著者らは,これまでに,ブチサンショウウオ胚における孵化腺細胞の発達を電子顕微鏡的に観察しており (松野・大氏’75),オキサンショウウオはブチサンショウウオに較べ,産卵時期が早いこと,両種の幼生の体表面に現れる斑紋の様相の異なり,およぴ両種の成体の体色や斑紋の型の異なりなどの相異的が同属の同じ群内でみられることから孵化腺細胞の発達や微細構造の点でも変化があるかどうかに興味を抱き,本年,自然産卵による卵塊を採集し,オキサンショウウオ胚における孵化腺細胞の電子顕微鏡的構造の変化を観察し,両種間の孵化腺細胞の発達とその構造について比較することとした。その結果,両種の胚に現れる孵化腺細胞の腺分化の様相は,電子顕微鏡的観察の上からは,類似する点の多いことを知り得たので,それらの観察結果を報告する。