2011年の東日本大震災での福島第一原子力発電所の事故を経て,多くの人びとが原発に反対する意見を示すようになった。各世論調査では,今もなお「原発反対」の意見が多数を占める。根強い「原発反対」の声は,どのような社会的背景に起因しているのか。本稿は,島根原子力発電所から30km圈内地域を含む鳥取県米子市の住民(20歳以上)を対象として2014年2~3月に実施した質問紙調査のデータからそれを探ることを目的とする。これまでの調査において原発の賛否にはつねに性差が認められ,また,先行研究では賛否の判断に影響する要因も男女で異なることが示唆されることから,分析は男女別に行なった。結果,原発反対に繋がっているのは,男性では資本制が生み出す格差社会への批判,女性では家父長制という権威主義的・男性優位の社会への批判であった。男女それぞれによって批判された社会制度は,いずれも近代産業社会を支え発展させてきたものである。原発反対を主張することを通して,男女それぞれ異なるアプローチでの近代産業社会批判が展開していることが伺える。