島根大学法文学部紀要. 文学科編

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島根大学法文学部紀要. 文学科編 15 1
1991-07-25 発行

人に関する情報の記憶と人物表象モデル

Person Memory and Congnitive Representation of a Person
松川 順子
ファイル
a003001501h004.pdf 1.76 MB ( 限定公開 )
内容記述(抄録等)
 私たちは自分も含めたいろいろな人についての知識を持っている。それは「やさしい」「気性の激しい人だ」などその人の特性に関わる印象であったり,「いつもせかせか歩いている」などその人の行動に関する記憶であったり,または性・身体に関する情報や職業・出身地などの略歴だったりする。このような情報は直接その人と接する中で獲得されたものや,他の人を介して言語的に与えられたものや,あるいはビデオなどのフィルムを通して非言語的に与えられたものなどさまざまである。個々の経験はエピソード的な記憶であるが,いくつかの類似の経験を重ねるにつれて,その人に関する属性情報として一般的な知識になっていくと思われる。
 ある人物について印象をもつということは,一般に印象形成の問題として扱われよう。人に関する情報の種類は先に述べたように言語的なものや非言語的なものがあり,その呈示としては直接相手に向かっている場合や間接的に行なわれる場合があるが,Asch(1946)は一連の言語的な特性情報からどのように印象が作り上げられるかの研究を行ない,特性情報の呈示順序によって印象が変化することや,中心的・周辺的特性と呼ばれるものがあり,中心的特性が変わることで印象がまったく変わってしまうことなどを明らかにした。このことから印象は個々の特性が互いに関連づけられまとめられた,すなわち体制化されてできるものであると考えられた。しかしこのことは印象評定から推測されたものであり,印象形成における体制化過程を直接扱ったものではない。それに対して,近年ある人に関する行動や特性の情報が体制化されていく過程や,体制化された結果としての人物に関する知識構造を明らかにしようとする関心が高まってきている。本研究ではそれらの研究のいくつかを紹介し問題点を整理することが目的である。