島根大学法文学部紀要. 文学科編

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島根大学法文学部紀要. 文学科編 11 2
1988-12-25 発行

Small Clauseと受け身の意味論

On English Small Clauses and the Semantics of Passives
遠藤 喜雄
ファイル
a003001102h002.pdf 1.61 MB ( 限定公開 )
内容記述(抄録等)
(1)の文のイタリック体の部分はsmall clauseとよばれる。
(1)John considers Mary smart.
このsmall clauseに関して,従来,なされてきた主な議論として次の二点がある。
(I)small clauseは統語的な構成素をなすか否か。
(II)動詞はsmall clauseにどのような制約を課すか。
本稿の目標は,この二点の考察を通して、s㎜all clauseの統語的、意味的特質を明らかにするところにある。
まず,第一点の意味するところを考えてみよう。(1)のイタリック体のsmall clauseについて,従来,それが統語的な構成素をなすという立場と,なさないという立場の二つが提案されてきた。第一節で,その二つの立場を検討し,small clauseが統語的な構成素をなすことをみる。
次に多このsmall clauseにどのような制約が課されるかという,第二の問題を考えてみよう。具体的にいうと,従来,動詞がsmall clauseに,あるタイプの範疇を要求する(categorial selection)という立場と,あるタイプの意味的な要素を要求する(semantic selection)という立場の二つが提案されてきた。第二節では、この二つの立場を検討し,動詞がsmall clauseの述部に課すのは、意味的な制約であることを見る。さらに,第三節において,その意味的な制約が、英語の受け身構文の意味論の解明に有効に働くことを見る。