本研究では、児童福祉における当事者参画の手法であるファミリー・グループ・カンファレンス(FGC)が北欧諸国でどのように拡大し、根付いていったかを明らかにする。FGCは1989 年にニュージーランドで法制化されて以降、ヨーロッパやアメリカ大陸など世界中のあらゆる地域、30 カ国以上で実践されており、北欧諸国にも1990 年代後半から導入されている。
本研究の目的は、子どもや家族を意思決定に参画させるFGC が北欧諸国でどのような特徴を持って発展し、北欧諸国の児童福祉サービスでどう根付いているかを明らかにすることである。専門職主義が強く、サービスの決定過程においては自治体のソーシャルワーカーが大きな権限を持っている北欧では、FGC 実践はこれまでの専門職の役割を大きく転換させるものであった。子ども本人の参画が必須とされていないFGC の実施国もある一方で、北欧諸国では、FGC 実践の核として「子どもの視点」が挙げられている。
北欧の実践報告や、デンマークの自治体の実践事例などを検討した結果、北欧諸国で展開されている「子どもの視点」を重視したFGC 実践は、支援計画作成段階に当事者である子ども自身を参画させることというよりむしろ、ミーティングのプロセスにおける子どもの満足感を高めることによって支えられていることが分かった。