本研究の目的は、市町村が総合相談支援体制を構築しようとする際、地域福祉計画をどのように活用しているのかについて、明らかにすることである。事例として、鳥取県米子市の地域福祉計画策定過程と、「総合相談支援センター」設置に向けた諸活動を取り上げる。本事例は、同計画が行政機構改編に影響を与えたのだが、この点について論じた研究は少ない。
研究方法は、筆者が2018 年以降、米子市の福祉政策形成過程に参加した経験をもとにした参与観察である。本文では、次の3つの具体的場面を描いた。
第一は、地域福祉計画・地域福祉活動計画を策定する場面である。本計画で「総合相談支援センター」の設置が規定された。第二は、米子市役所・地域福祉推進室を新設する場面である。同室を、市役所内ではなく社会福祉協議会と同じ建物内に置いた点も重要であると指摘した。第三は、「総合相談支援センター」設置の場面である。センターには福祉専門職が配置され、相談の「総合化」が模索されている。
以上の実践を踏まえ、結論部分では、次の3点について述べた。第一は、計画への住民参加の導入が、総合相談支援センター設置の要因になったことである。第二は、計画が行政の機構改編を促したことである。第三は、地域福祉計画にソーシャルワークの方法を規定することにより、総合相談拠点設置を実現したことである。