島根大学教育学部紀要. 自然科学

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島根大学教育学部紀要. 自然科学 22 1
1988-10-31 発行

プロペラ誘導速度の計算法 : 主として周方向成分について

A Calculation Method of Propeller Induced Velocity (On the Circumferential Component mainly)
坂尾 稔
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内容記述(抄録等)
 静止流体中を回転しながら軸方向に一定速度で前進するプロペラの誘導速度は翼に束縛される吹出しと渦及び流体中に流出する自由渦による誘導速度から成るが,本論ではこれらの中で支配的な束縛渦及び自由渦による誘導速度の周方向成分の計算法について主として考察する。自由渦による誘導速度は流体中における自由渦の位置により変化する。例えばウォーター・ジェット推進装置ではダクトに流入した水はダクト内に装備されたインペラーにより加圧されてノズルから高速で噴出するので,インペラーから流出する自由渦はその位置がダクトの形状で変わってくる。普通の場合ノズル部ではダクト断面が絞られるのでインペラーから流出した自由渦はノズル部ではかなり軸中心の方向にその位置が移動する。通常のプロペラの場合でもプロペラから流出する自由渦はプロペラ誘導速度の半径方向成分のためにプロペラ後方では若干その位置が軸中心の方へずれるのが普通であり,負荷の大きいプロペラ程ずれ方は大きくなる。したがってこのような場合は誘導速度の計算に当たっては自由渦の位置を考慮に入れる必要がある。本論ではまず自由渦分布面の半径が場所により変化する場合についてビオーサバールの法則を用いて誘導速度計算式を定式化す季。次いでこれを用いて最も基本的な,自由渦分布面の半径が一定で軸方向に変化しない場合について周方向の誘導速度成分の計算法について具体的に検討を加える。高木は自由渦分布面の半径が一定の場合についてビオーサバールの法則を用いて誘導速度の周方向成分の計算を試みているが,その最終の計算式はベッセル関数を含む被積分関数の無限積分の形となっており,この高木の計算式では誘導速度の性質が分かりにくく,また数値計算に対しても不便である。本論で求めた最終の計算式は第一種,第二種楕円積分のみで表されておるので分かりやすく,数値計算にも便利と思う。なお本論では計算に当たって次に示す流カモデルを用いることにより記述の簡単化をはかったが,このような流カモデルを採用しても誘導速度の計算法としての一般性を失うものではない。(1)プロペラ翼数は無限大とする。(2)プロペラ・ボスの半径は0とする。(3)束縛渦の密度は半径方向に一定とする。したがって自由渦はプロペラ翼先端とプロペラ軸中心のみから流出する。(4)プロペラ翼先端から流出する自由渦のピッチは軸方向に一定とする。
 なお本論で使用する主な記号の説明は末尾にまとめて示す。