島根大学教育学部紀要. 自然科学

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島根大学教育学部紀要. 自然科学 21
1987-12-25 発行

赤名花崗閃緑岩深層風化殻

The Deep Weathering Crust of Akana Granodiorite
秦 明徳
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内容記述(抄録等)
 身近な自然現象を通しての地域に即した地質営力研究とその教材化は,地学教育における最も重要な研究課題の一つである。本稿では外的地質営力の一つである風化作用の基礎的研究について報告する。
 真砂土化や深層風化殻の形成に特徴づけられる花崗岩類の風化現象は古くから注目され,多岐にわたる研究が積み重ねられてきている。風化進行に伴う鉱物の変化や化学的性質の変化についての研究は,Reiche(1943,1950),菅野他(1960),Kato(1964,1965),大八木他(1969a),中川他(1972),三浦(1973),三浦・樋口(1974)等多数の報告がある。又,物理的力学的性質の変化については,Lumb(1962),大八木(1969b)西田・福田(1979),木宮(1975)等がある。しかしながら,これらの研究が,野外における肉眼観察を主とした観察結果と対応する形で研究が進められている場合が少ないこと,全風化過程を通しての研究が少ないこと,又,諸性質を総合的視点から精査したものが少ないこと等のため定説となる風化殻分帯が確立されるには至っていない。さらに,花崗岩類の生成史に着目した研究が少なく,花崗岩類が被った風化前変質がどのようなもので,風化変質が加わるとそれがどのように変化するのかも明らかになっていないことが,その確立を妨げている要因である。
 これらの問題を解決するのには,古い地形と厚い風化殻が残存する地域を研究対象として選定することが必要となる。そこで,島根県出雲市南方,中国脊梁山地に沿う赤名花崗閃緑岩分布地域を研究対象として用いることにした。本地域は,地形的には中位平坦面(標高400~600m)を形成し,赤色風化を被った深層風化殻を伴っている。
 筆者は,本地域において,主として鉱物学的手法を用いながら前述の問題点を明らかにしようとしてきている。本地域の地形的地質的特質,風化前変質及び肉眼観察やX線粉末回折実験等に基づく風化殻分帯については,その一部を既に報告している(秦,1985,1986)。
 本稿では,さらに赤名花崗閃緑岩深層風化殻について化学組成の点から検討を加えるとともに,環境変化に特に鋭敏な造岩鉱物である黒雲母について,その変質経路を追跡した結果について報告する。
 なお,図−1に調査地域の地質概略と露頭位置を示す。
NCID
AN00107941