前編では、まず、初期近代の英国詩人たちの表現を、錬金術の理論と照合させながら確認していった。錬金術によって取り出される第五元素の効果は、1650年代の錬金術復興運動の時期を経て変化していったこと、死からの復活を可能にするものとして錬金術が描かれていることに注目した。
本編では、トマス・ロッジの「錬金術の解剖」やエイブラハム・カウリーの「オード」の中で描かれる、錬金術師の表現をみていく。また、ベン・ジョンソンの戯曲『錬金術師』の中の錬金術の実験の行程や、錬金術をとりまく人々の描写を検証する。
また、後編では、終末思想と錬金術の関係を明らかにしながら、ヘンリー・ヴォーンの詩の中の実践的錬金術の描写を清教徒の「新たなる光」(‘New Light’)の概念に対する批判の視点から考察したいと考えている。