島根大学教育学部紀要. 教育科学

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島根大学教育学部紀要. 教育科学 6
1972-12-20 発行

”わらべうた”の和声化に関する一考察

On the Harmonization of "Warabe-Uta"
小林 昭三
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内容記述(抄録等)
 近年,わが国の音楽教育において,民俗音楽,特に日本の伝統音楽への関心が高まってきていることは当然のことと云わねばならない。日本の伝統音楽に親しみ、理解を深めるためには,これらの原形を内包し,白然発生的とも云えるわらべうたから導入するのが当然であろう。
 このように,伝統音楽と密接な関係にあるわらべうたについて,あらゆる角度から研究がなされねはならない。最近まで,音楽教育の場では,主として西洋の18・9世紀の音楽だけが芸術性の高い音楽文化として取扱われてきていたと云っても過言ではない。しかしながら,世界の各地では,いろいろな特色をもった音楽が存在するということ。しかも,これらの音楽文化のなかには,芸術的に優れた音楽も数多く存在するということを認めないわけにはいかない。我々はこのことを認識し,広い視野にたってこれらの文化遺産にふれ,これを継承し,さらに発展させるために努力を惜しんではならない。
 日本の伝統音楽は,西洋音楽にみられるような体系づけられた“和声”をもたない。わらべうたも,本来,単旋律で歌われるべきものだが,果して教育の場で扱われる教材として,単旋律の形でのみ与えるだけでよいかどうか。優れた教材とするには,当然,音楽的諸要素を含み,これらの要素が指導できる内容をもった作品となるように配慮されねばならないであろう。
 この論文では,主として,”わらべうたの和声化”に焦点をしぼって,その考察を試みたものである。