島根大学教育学部紀要. 教育科学

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島根大学教育学部紀要. 教育科学 31
1997-12-01 発行

話者論と詩教育(三) : 詩の創作指導

A Study of Poetry Education with Special Reference to "Story Teller's" Viewpoints
足立 悦男
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内容記述(抄録等)
 本論文では、「話者」型の詩の創作指導について考察する。
 前稿において、私は、「話者−読者の受容類型」として、「話者」の世界を「話者−読者」の関係に注目して、次のように分類する考え方を示した。
A「同−同」型 B「異−同」型
C「異−同」型 D「異−異」型
 この分類は、話者と読者の「関係」を表している。詩の世界の「教材価値」は、作品そのものに内在するのではなく、作品と読者の「関係」によって判定されなくてはならない、という考え方(関係価値)にもとづく分類であった。従来の詩の創作指導では、この点は全く意識されることはなかった。したがって、「話者」を中心に、詩の創作指導モデルを分類するのは、詩教育において新しい提案である。
 子どもの詩(児童詩)の特徴は、少年詩(児童文学)と違って、詩の授業において、「話者(作者)」の存在を大きく焦点化できる点である。子どもの詩(児童詩)では、詩集(公刊・私刊をとわず)などに、作者の「学年」が明記されている。国語教科書の児童詩にあっても、一般に、同じ「学年」の児童作品を掲載する。作者の「学年」が、とくに重視されているのである。この点は、少年詩(児童文学)との大きな違いである。少年詩(児童文学)の場合、作者は大人の詩人であるから、作者の年齢は間題とされないし、また問題にする必要もない。したがって、子どもの書く詩(児童詩)の場合、話者(作者)の「学年」は、児童詩に固有の条件である。
 子どもの詩(児童詩)の場合、話者−読者の「関係」はとらえやすい。そのために、話者−読者の「関係」を、焦点化して指導することができる。A型~D型の類別も、私は、少年詩(児童文学)よりは明確にできるものと考えている。A型~D型は、したがって、詩の創作指導の授業パターンでもある。
 以下、本稿では、この分類法にもとづいて、先行実践の考察をすすめていく。