1996年、北京の当代中国出版社から上下2巻の「当代中国教育」が出版された。両巻合わせて総ぺ一ジ数1,365、現代中国の教育事情を網羅したものであり、最新の情報が盛り込まれている。障害児教育に関しても当然一つの章がたてられているのであるが、その章は「第13章特殊教育と工読教育」となっている。「工読学校」は、日本の教護院もしくは少年院にあたるもので、「工読教育」とは、すなわち軽犯罪を犯したりあるいは非行歴を持つ少年を対象とし、労働と学習を通じて更正させるための教育ということになる。日本では、これら二つの教育分野を合わせて一つの章に包含するといった発想は現代においてはふつうには行われないが、「障害者対策基本法」の「対策」と相通じるものといえる。両者における共通項は、社会的に好ましからざる存在、可能ならば出現を阻止したい存在ということであり、すでに存在している以上なんらかの「対策」を講じなければならないということである。
その第13章の中で、障害児教育そのものが記述されているぺ一ジ数は13、総ぺ一ジ数の1%にしかすぎない。日本ではそれほど重視されない少数民族教育に142ぺ一ジを割いているなど、社会体制や国情の相違に由来する面もあることを考慮すべきとしても、いかにも比重が小さいという印象は拭えない。
本稿では、本書の内容を概観しながら、中国における障害児教育をめぐるいくつかの問題について、検討しておきたい。