詩教育研究の課題は、ホスト鑑賞論の詩教育をどう作りあげていくか、である。私は、ポスト鑑賞論の立場から、ここ数年、「異化・変容・生成」をキーワードに、「異化の世界を作りだす詩教育」の研究をつづけてきた。本稿も、その研究の一編である。
本稿では、「話者」をめぐる研究課題として、「話者-読者」の受容類型について考察する。「話者-読者」の間には、どのような類型がみられるか、という課題である。この課題を、子どもの受容反応の分析をとおして、明らかにしてみたい。詩教育研究において、これまで全く取りあげられてこなかった、新しい研究課題である。
この研究では、「話者」を、「作者の設定した『作者』」という意味で使用していく。「話者」の概念は、西郷文芸学によって作りだされれた。そして、法則化・国語の研究グループによって、一般化された概念である。「話者」という概念は、もともと「分析批評」において、作品を作者から独立したテクストとして、批評の対象とするために考えられた概念である。
本稿の「話者」研究と、西郷文芸学や分析批評との違いは、「作者-話者」を区別するというだけでなく、それによって、詩の授業において、「話者-読者」の受容類型を明らかにしている、という点にある。詩教育研究において、「話者」をめぐる問題といえば、「話者」という存在を認めるかどうか、「作者」と「話者」を区別すべきかどうか、という点であった。したがって、この論文で取りあげる、「話者-読者」の受容類型ということは、これまでほとんど明らかにされてこなかった研究課題である。