島根大学教育学部紀要. 教育科学

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島根大学教育学部紀要. 教育科学 24 1
1990-07-31 発行

技術科と数学科に対する態度の比較(I) : 男子中学生を対象として

A Comparison between Attitudes toward Technology and Mathematics(I) : Putting Focus on Jr.High School Boys
大國 博昭
大谷 忠宏
ファイル
内容記述(抄録等)
 昭和58年11月に,中央教育審議会は「教育内容等」小委員会の『審議経過報告』を発表し,その中で,今後の学校教育で特に重視されなければならない視点の一つとして「自己教育力の育成」をあげている。
 この自己教育力の育成とは,主体的に学ぼうとする意志,態度,能力の形成と確立であり,生徒に学習への意欲と学習の仕方を習得させることであるとしている。
 このためには,「学校教育において,基礎的・基本的な知識・技能を着実に学習させるとともに,問題解決的あるいは問題探究的な学習方法を重視する必要がある」と指摘している。
 ところで,技術科教育の教授・学習過程の場合,学習指導法として,この課題解決的なプロジェクト法が広く支持されており,特に製作学習や観察・実験を含む実習の場合がそうである。ここでは,このプロジェクト法を製作学習の過程との関連にしぼってみてみるならば,学習が成立するための前提条件としては,まず第一に,製作学習の前段階までに,製作場面で製作学習の根拠として活用されるのに必要な基礎・基本的な諸知識・概念及び技能などの習得がなされていることが必要で,このことは,課題解決学習の成立要件からも不可欠のこととなろう。
 次に,製作学習が成立するための,今一つの要件について検討してみることにする。
 製作学習は,言うまでもなく,学習の主体である生徒一人ひとりが,自己の製作意図や能カに適合した題材を設定し,その作品の機能が十分に発揮できるように,あらゆる面から検討して構想・設計し,製作図や適切な加工方法の理論に基づいて製作し,作品や作業過程が当初の製作・作業目標に到達し得たかどうかを評価する全過程をとおした主体的な活動によって成立しうるものである。
 このように考えるならば,製作学習の成立を支えるものは,生徒の主体的な学習行動が,一定の目標に方向づけられ,一貫した,そして持続されたものでなけねばならない。
 そのためには,この「技術科に対する態度」の形成と確立が重要で,その土台となるものが,「技術科に関する自己概念」であり,これらの形成と確立を前進させる力を支えるものが「技術科学習におけるやる気(学習意欲)」である。
 ところで,技術科と数学科は認知面での目標や内容に密接な関連があることは,認められているところである。それならば,数学科学習における情意的特性と技術科学習における情意的特性との間に関連があるか否かは興味深い問題である。
 先に,大國・伊藤の二者の共同で「数学教育および図学教育における情意的特性の比較研究」を試みる目的で,「高専生の数学および図学に対する態度の研究」について報告してきた。また,大國は,この研究の一環として,「技術科教育における学習意欲に関する研究(III)」の中で,図学に対する態度とその変容について検討してきた。
 本稿は,このような研究の一環としておこなわれたものの報告である。