学校教育における家庭科は,単に裁縫や調理を指導するためにのみ存在するのではない。全人教育の一環として,人間がより人間らしく生きるために必要な知識や技術を習得させ,家庭生活のみならず生活全般に対する理解を深めさせるとともに,生活者としてのあるべき態度と能力の育成を目ざしている。このように家庭科をとらえる時,女子だけが学習するのではなく男子にも学習させる必要がある。
家庭科は学習内容を家庭生活を中心とした生活に求めてきた。その家庭生活を女の役割ととらえる伝統的な性別役割意識の影響によって,日本ではこれまで家庭科を女子が主に履修する制度をとってきた。それゆえ,家庭科は他の教科と比較して,児童・生徒の性別役割意識の習得に関連しており1)2),この性別役割意識がまた,男子の家庭科学習に悪影響を及ぼすことが考えられる。
ところで,家庭科は昭和62年12月に教育課程審議会の最終答申により,小・中・高とも男女共学の制度をとることが決定しているので,男女共学を実施し定着させるためには,教師の家庭科への理解を一層深める必要がある。
そこで,将来教師となりこれからの家庭科のあり方に大きく影響を与える教育学部の学生が,学習経験によって家庭科をどのようにとらえているかを把握することは,男女共学実施に関する諸問題を明らかにする上で有意義なことと思われる。
本研究では,大学生の家庭科についての理解を深めさせ,指導カを育成するための資料を得ることを目的とし,これまで家庭科の履修形態が異なっていた男女学生の生活領域における性別役割意識,家庭科のイメージおよび家庭科のとらえ方など家庭科教育観について,調査・検討したので報告する。