島根大学農学部研究報告

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島根大学農学部研究報告 3
1969-12-15 発行

豚飼養の経営構造(第1報) : 飼養労働者面からの分析

Management Structure of Keeping Swine
濱田 年騏
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内容記述(抄録等)
昭和30年代からの経済成長は,自足的な生活を営なんできた農村,農民に大きな変革を要求してきた.まず経済,文化の農村への浸透は農村生活者に従来以上の現金を必要とさせ,外部労働力市場からの強い吸引力は農家労働力の流出をうみ,また新規学卒者に魅カの乏しい農村を捨てさせた.
 その結果農業基幹労働力の他産業への流出は,農業基幹労働力の男から女への質的な転換をよぎなくさせ,また一方農業生産の他産業に較べての相対的な停滞による両者間の生産性,所得の格差の一層の拡大を生み出し,ついに昭和36年農業生産構造の再編成,農業と他産業の生産性,所得格差の是正を目ざし,農業基本法が農業構造の改善,農業生産の選択的拡大などを柱として登場した.
 さらに現在において農業生産の偏向を象徴するかのように,米過剰による米価据置き,それによる米作農家の動揺といった30年以後今日に至る農業全体の流れの中で,農業経営者は他産業の生産性に比肩できる技術,能力を要求され,また現在ほど新しい農業の道を開くためその能力を問われた時代はない.
 こうした中で養豚,養鶏などの畜産部門は,購入飼料への完全依存,飼養技術の簡素化をとうして多頭羽飼養が可能となり,多頭羽飼養形態による商品生産としての農業経営を成立せしめ,新しい農業として先鞭をつけた.
 そこで,島根県のように後進的地域にありながら,近年目ざましい勢いで飼養頭数を増大しつつある,島根県簸川郡湖陵町西浜地区の豚飼養農家を例にとり,当該農家の飼養労働力を中心に据え,その実態を述べるとともに,今まで果して来た役割,経済性,今後の動向を検討して第1報としてまとめた.商品生産農家の経済性,経営耕地面積との結び付きなどは今後にゆずる.
 なお筆者としては,西浜地区の豚飼養農家を全戸当るつもりで,次のようにして農家を取り出した.
 (1),昭和40年農業センサスの個表より
 (2),昭和40年以後飼養を開始し,農協利用を行なっているものについては,農協の養豚台帳より取り出す.
 (3),昭和40年以後飼養を開始した農家で農協を利用していない農家は,部落単位でおる部落養豚委員から 聞き取る.
 以上の方法で調査農家に入り,各飼養農家で照会しながら,ほかに豚飼養農家がないか聞いたので,飼養農家の漏れはほとんどないものと確信する.
 なお調査時点で調査不可能な農家が3戸あった.