島根大学農学部研究報告

ダウンロード数 : ?
島根大学農学部研究報告 25
1991-12-21 発行

過疎・高齢化離島における漁業生産の実態と課題 : 隠岐郡知夫村の事例

A Study on the Actual Conditions and Problems on Fishery Production of Depopulated and Aging Society in Solitary Island : A Case of Chibu Village of Oki District
ファイル
内容記述(抄録等)
 過疎化と高齢化は,内陸の農山村だけでなく漁村においても,さらには離島の漁村においてはいっそう深刻な問題を投げかけている。それは地域社会の活力が低下し,さらには社会そのものの崩壊,集落社会の再生産がなしえない状況にまでたち至っているのである。
 過疎化対策の一つとして定住条件の整備があり,各町村で積極的に進められている.この定住条件を生活基盤整備と地元産業育成に分けて考えれば,内陸の町村の場合,たとえ地元での産業が十分な雇用をもたなくとも,生活基盤さえ整っていれば,地元に居住しながら通勤しながらの兼農あるいは通勤就業が可能である.しかし,離島の場合は他町村に通勤が不可能なため,地元に雇用力のある産業が必要になる.しかも,内陸・離島にかかわらず,その産業は就労者にとって十分な魅力を持っていなければならない。
 ところで漁業生産の特徴として,危険な重労働とともに,漁獲の不安定性・不確実性があげられる.一方,産業のサービス化が進み,このような第一次産業に従事するものは確実に減少している。しかし,海によって周囲から隔絶され,十分な田畑や林業のできる森林もないような離島の場合,地元で就労しようとすれば漁業に依存せざるを得ない。ここに旧態依然とした漁業しかなければ,ますます就労者が滅少し,地域活力の低下,地域社会の崩壊を招かざるを得ない.
 そこで,本論文では,事例として隠岐郡知夫村を取り上げ,過疎化,高齢化がすすんだ離島における漁業生産と水産物流通の実態を把握し,漁業が十分に魅力的な産業になり,地元での雇用が達成され,過疎化,高齢化からの脱却のための課題を検討する。