島根大学農学部研究報告

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島根大学農学部研究報告 25
1991-12-21 発行

集落営農組織の形態選択規定要因

An Analysis on Choice of Types of Community Farming Organization
大森 賢一
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内容記述(抄録等)
拙稿において,筆者は実態調査に基づき,土地改良事業の社会経済効果の1つとして,(集落単位の)生産組識の形成促進効果を記述した。即ち,土地改良による技術パラメータの変化は,労働と資本の代替を通じて,機械・施設の過剰投資の軽滅・解消,農地の団地的集積,兼業化の進展による労働力の不足への対応,等を目的とした集落による土地利用調整,機械の共同利用,経営の集団化等を誘発する.
 この点は,都府県(沖縄県を除く)単位のデータ(1985年)を用いて,水田の土地改良に限定した簡単な回帰分析によっても確認できる.
 y=O.273+<O.824>x_1 - <0.22>x_2  adj. R^2 = O.55    (1)
      (5.450) (-3.787)
但し,y は農家100戸当たり生産組織数(但し,首位部門が稲作の組織に限定),x_1 は汎用田化率(%),x_2 は男子生産年令人口のいる専業農家率(%)である.また,( )内はt-Valueである.決定係数は低いが,いずれのパラメータも1%水準で統計的に有意である.
 しかしながら,現実に選択される生産組織の形態は一様ではなく,また,土地改良が実施されたにもかかわらず,生産組織が採用されないケースも当然存在する.上記拙稿においては,生産組織の分化機構については不問に付されたままであった.
 小稿の課題は,「集落ぐるみ」の生産組織に対象を限定し(以下,「集落営農組織」と呼ぷ),「同一の土地基盤条件の下で,集落営農組織を採用する集落と採用しない集落が併存するのは何故か」或いは「同一の土地基盤条件の下で,選択される集落営農組織に多榛性が生じるのは何故か」を計量的に明らかにし,上記拙稿の分析を補完することにある。