島根大学農学部研究報告

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島根大学農学部研究報告 22
1988-12-21 発行

森林組合事業の展開と地域における役割 : 岡山県真庭森林組合を事例として

Development of Forest Cooperative Project and Its Role in the Region : A Case of Maniwa Forest Cooperative in Okayama Prefecture
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内容記述(抄録等)
 林業・林産業をとりまく現状は,近年,需要局面を中心にしてやや景気の回復がみられる.木材需給を左右するしのは,需要量と価格である.木材需要の約半分をしめる建築部門では,新設住宅着工戸数は1981年以来,110万戸台で推移していたが,84年からは経済の拡大にともなって増加し,86年には136万戸あまりの実績を示している.一方,木材価格も81年以来低迷を続けていたが,87年第3四半期以降高騰し,近年にない特徴的な動きをみせた.
 さて,このような短期的な木材需要の動向と,山元における林業の現状は別問題である.木材供給の主体たる山元では,以前にまして状況は,厳しいものになりつつあるといわざるを得ない.その要因としては,まず,上のような木材需要量,価格の短期的な変動に対しての木材供給が計画的に行えず,ひいては不安定な林業経営を強いられることが挙げられる.加えて,木材価格水準の上昇が,労賃のそれに追いつけず,その差が拡大し,木材販売収益では再造林費用がまかなえなくなっている.従って,一般の小規模林業経営体(林家)では,伐採・植栽を休止し,積極的には長伐期化,消極的には森林の放置化へと傾斜しつつある.このような,林家の林業経営の第一線からの後退にともなって,最近では,森林所有者からの受託などによって林業経営の一部あるいは全部を行う,個人,会社,森林組合,各種団体などの林業事業体が,林業経営の主体として,脚光を浴びてきている.
 つまり,林業事業体では,林家とは異なり,所有範囲に限定されることなく広域に事業を展開することが可能であり,その事業の巾広さとともに経営に弾力性をもちうるのである.そのなかでも,森林組合は最も一般的な存在であり,各種の事業を展開している.昨年87年度には,森林組合法の一部が改正され,事業種目の拡大に法的措置が与えられた.
 本稿では,林家に代わる林業経営の主体として,森林組合をとらえ,森林組合の事業展開の推移とそれが地域林業におよぼした影響について,岡山県の真庭森林組合に即して考察を行う.