島根大学農学部研究報告

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島根大学農学部研究報告 16
1982-12-20 発行

鶏卵生産経営の実態と改善方策 : 島根県の実態分析から

Studies on the Actual Conditions and the Reform Measures of Laying Hen Business
平塚 貴彦
濱田 年騏
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内容記述(抄録等)
 わが国の鶏卵生産は,戦後,鶏卵需要の増大に対応して着実に拡大してきた.鶏の飼養羽数の急増にもかかわらず,経営数は著しく減少したため,経営規模(一経営当り飼養羽数)は拡大を続けてきた.鶏の飼養羽数が全体として横ばいまたはやや減少になってきた最近も,経営規模拡大はなお続いている.その間,鶏卵生産経営は激しい競争の中で,経営規模拡大,新しい生産技術の導入,そして市場対応への創意工夫などの不断の努力によって,経営の合理化を図り,生産性を向上し生産費を低減して経営の維持発展を実現してきたのである.したがって,現在の鶏卵生産経営は,激しい競争に勝ち残ってきた存在であるといってもよい.
 わが国の鶏卵生産あるいは鶏卵生産経営の動向を,このように概観すると,鶏卵生産部門は,農業の中でもとりわけ競争原理が貫徹してきた分野であり,上述のような鶏卵生産経営の努力によって得られた成果の相当部分が,激しい競争状態にある鶏卵市場の価格形成機能を通して,おおむね広く国民(消費者)に分配されてきたこともよく理解される.まさに,「卵は物価の優等生」といわれる所以でもある.
 しかし,激しい競争に堪えて発展してきた鶏卵生産経営も,今日では,鶏卵需要の停滞期を迎えて,需給調整のための計画生産を余儀なくされるなど,経営環境の悪化に対応するため,一層の合理化が必要になっている.
 そこで本稿では,島根県における鶏卵生産経営を研究素材に,鶏卵生産経営間題を経営における生産技術過程と経済過程の両側面から総合的にとらえ,生産技術,鶏卵販売価格,そして飼料購入価格を中心に経営の実態を明らかにし,それらが経営の収益性にどのようにかかわっているかを検討する.そして,その分析結果をふまえて,鶏卵生産経営改善の基本的な諸方策を指摘する.