島根大学農学部研究報告

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島根大学農学部研究報告 11
1977-12-15 発行

農地改革後の農地移動の性格 : 島根県宍道町来待地区の事例より

The Character of the Movement of Land since Land Reform
濱田 年騏
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内容記述(抄録等)
 農地改革は永年日本の農業構造を規定してきた寄生地主制を解体し,広範な自作農を創出した.その点農地所有構造は改革前に比し大きな変化をうけた.しかしながら農地改革は自作農創設に際し,画一的に作用,結果したとは必ずしもいえない.むしろそれはそれぞれの地域がもつ地主構造,村落構造の規定をうけ,小作地の解放,農村の民主化はもとより,改革後の農業展開にも大きな影響を与えたことを考慮せねばならない.
 農地改革後30年を経過しようとする今日,農業問題は経済の高度成長の過程で農民層分解,農法の再検討等さまざまな論議がなされてきた.これら論議はいずれも日本農業が抱えている自作農体制を基礎構造とするものであり,その意味で農地改革の位置づけ,具体的には改革がどのような形態でなされたかに求められる点が多い.
 農地改革の位置づけ,性格については既に多くの研究者において貴重な業績をみることができる。本稿はそうした研究の申にあって,(イ)従来の研究の多くがマクロ分析に終始し,綿密なミクロ分析が欠落している農地改革後から1955年までの農地移動を改革前の地主構造とのからみで分析したこと,(口)本稿の研究対象は従来の多くの研究が平坦部・大地主地帯,あるいは商品生産の発達した地帯に偏していたのに対し,日本の農地の30%を占める農山村において,部落的農地管理がなされていた在村型小地主地区の事例分析という特色を有する.
 本稿の分析順序は,まず2.で農地改革前について在村型小地主あるいは部落的・同族的関係の維持に農地がいかに利用,配分されていたかをみる.3.ではそうした部落内の農地所有構造が農地改革によりどのように変化したか,また逆に農地改革の制約となったかみる.そして4.において,農地改革後1955年までにひん発する農地移動が地主構造さらには農地改革の不徹底性とどのような因果関係にあり,その結果生産力発展,とくに地区生産力担い手層にどのような影饗をもたらしたかを具体的に明らかにする.