2000年9月5日から9日までの日程で,筆者らは中国北京市懐柔県障害者連合会及び北京市中西医結合医院,四季青郷敬老院等を訪問した。これは島根県社会保障推進協議会が企画したものであるが,この訪間を通じて,中国の障害者福祉をはじめとする杜会福祉や医療の状況とそれに携わる人々の考えや思いの一端を伺い知ることができた。
北京市懐柔県障害者連合会では彭明啓理事長が不在のため林祥泰副理事長が応対し,連合会の役割と活動について説明がなされた(写真1)。これをもとに質疑応答と意見交換を行った。地域の障害者について個々によく状況が把握され,きめ細かな施策を講じようとしている姿勢が印象的であった。
北京市中西医結合医院では,鍼灸や脈診等々中国医学による診療の実際を見学した(写真2)。障害児学校においても日常的にこうした漢方が取り入れられていることは前回訪間時に知ったが,広範な疾病に適応されていることをあらためて実地に知ることができた。
また四季青郷敬老院は広大な敷地を有し,農園も持っていた。まさにゆったりとした環境の中で過ごすことができることの大切さを実感させられた(写真3)。そして歓迎の歌の披露もあったが,この他書の掛け軸も贈呈された。これらはリハビリの一環として行われているということであったが,歴史と文化に根づいたリハビリという観点も重要であることを再認識した。
この訪問を通じて多くの成果を得たが,これには彭明啓理事長,馬純礼海淀区民政局長及び中央民族大学胡振華教授の高配が大きく寄与していることを付記し,謝意を表しておきたい。
本稿は,今回の訪間先のうちの北京市懐柔県障害者連合会にかかわる部分をとりあげる。北京市懐柔県の障害者を中心とする福祉の状況と間題点については胡勇がすでに1999年1月に修士論文としてまとめたものがある。今回の訪問で得た情報等の基本はその論文に反映されているため,本稿はその修士論文のなかの関連部分を要約し修正を加える形で展開している。
修士論文は,胡勇が1998年3月に現地で行った調査,そして同じ月に島根県大田市福祉関係者の団体とともに北京市内平野地域の農村(北京市南部の通県)の福祉工場を見学した後,再び懐柔県に入り独自に行った実地調査に基づいたものである。なお,この調査に際しては,北京市障害者連合会副理事長侯淑芬女史および北京市懐柔県障害者連合会理事長彭明啓氏,さらに懐柔県喇叭溝門郷人民政府の担当職員の手厚い援助を得ている。