島根農科大学研究報告

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島根農科大学研究報告 11
1963-01-31 発行

林業の基本問題と家族経営的林業について

On the Basic Problem of Forestry and Family Forest
Kitagawa, Izumi
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林業における基本問題と基本対策が,昭和35年10月に答申されて以来,はやくも2年の年月が過ぎようとしている。その間,林業の基本対策が具体化されたのは,去る第40国会において,森林計画制度を中心とする一部の森林法が改正されたのみに止っている。もっとも,その間における林業基本問題に対する議論にはかなり活溌なものがあったが,基本問題の中心的な位置を占める林業の構造改善に関する対策は,未だ海のものとも山のものともつかぬ現状にあるといってよいであろう。
 そこで,この小論では,さきの「基本問題」で提出された構造改善なるものが,どのようなものであり,何をネライとしたものであるかを主として林業の生産関係の内部に求めて,その問題点を明らかにし,併せてわが国林業発展の方向を考えてみたい。その試みが「基本問題」で提出された重点対策に焦点をあわせることになる以上,中心は「基本問題」でいうところの家族経営的林業の性格分析となるが,まず,その前提として「基本問題」で考えられている林業の基本問題および林業の構造問題とは何かということからみていこう。もとより,今日の林業問題は,より基本的には,わが国の資本主義機構そのものに規定されて生じているものではあるが,それが,林業問題として発現するかきり、林業の生産関係の内部においても,なんらかの矛盾が存在するはずである。