山陰地方の中・上部第四系は,三瓶山および大山の火山噴出物が良いカギ層となり,層準決定が比較的容易である。そのうえ,これらの火山噴出物におおわれるため,植物化石産出層の保存も良好であることが多い。それにもかかわらず,植物化石に関する報告は少ない。
筆者は,1969年以来,いくつかの地点で新しく植物化石を採集し,またこれまでの産地の再調査を行い,同時に泥炭層や粘土層の花粉分析も進めてきた。その結果を報告し,あわせて,第四紀中・後期の気侯変化について考える。
この研究を行うにあたり,鳥取大学・赤木三郎教授をはじめとする山陰第四紀研究クループならぴに蒜山原団体研究クループの各位には種々の援助を得た。また,福島大学,鈴木敬治教授をはじめとする古植物グループの各位には,とくにウルム氷期の植生変遷に関して,討論と助言を得た。記して感謝する。