水中のヨード消費物質としては硫化水素,チオ硫酸,亜硫酸,分解途中の腐植物,亜硝酸等何れも I_2 溶液を還元するもので,従つて其の多少は水中溶存酸素の増減と共に還元性水質か否かの程度を示すことにもなる。
筆著等は先に報告した様に中海に於ける水の悪変が湖水の還元性々質形成によることを推察した。この還元性水質の形成は如何なる化学的,生物学的変化に基くものか,或はこの還元性物質が何であるかは検討すべき重要な事項であるが,赤湖発生時とか,或は所謂腐敗水に於てはヨード消費量が著しく増大する。
然し乍らこのヨード消費物質の測定法に就ては前報に報告しした様に半鹹湖という中海の特性に応じて検討しなければならぬ。
上述のヨード消費物特にその主要なものと見なされている硫化水素の測定法としては(本論文中に)記載され叉多数の報告がある。
之等を大別すれば沃素滴定法と比色法に分類されるが筆者等はこれら測定法中主として沃素滴定法として海洋観測法中に記載されている所謂Dupasquier-Fresenious法を用いて総ヨード消養量測定の可能性を推察し,この基礎実験及び併せて本法の主要目的である硫化水素の測定法として,之を半鹹湖に適用する場合の留意すべき点を考察した。