裁判所は、決議取消の訴えが提起され、決議取消の事由があることが判明しても、諸般の事情を総合的に判断して、取消判決をしない(請求を棄却する)ことができる。これを、裁判所の裁量棄却という。商法二五一条(以下、単に条文だけを挙げる場合には商法のそれを指す)は、招集の手続または決議の方法が法令もしくは定款に違反するときといえども、①その違反する事実が重要でなく、かつ②決議に影響を及ぼさないと認められるときに、請求の棄却(裁量による棄却)ができることを定めている。本稿は、どのような場合がここでいう①その違反する事実が重要でなく、かつ②決議に影響を及ぼさないと認められるときにあたるのかについて検討する。