現代ドイツ語では、与格(3格)(dative)と対格(4格)(a㏄usative)とが連続する構文において、当該要素がともに名詞であるか、ともに人称代名詞であるか、あるいは名詞と人称代名詞の組み合わせであるかによって基本的な配列パターンに違いが観察される。この基本パターンの相違は初級文法においても扱われる重要な現象であるが、このような配列パターンの区別を持たない言語を母国語とするトイツ語学習者には不必要な文法の複雑化であるように思われる。本論は、有標性(markedness)の概念を用いて、なぜこのような一見不合理な配列パターンの区別が生じ得るのかという素朴な疑問に答える試みである。